本プロジェクトは、2018年公益財団法人トヨタ財団の国内研究助成対象研究として、2019年にスタートしました。研究タイトルは「障害者を援助する人々のメンタルヘルスの支援の検討」で、障害者を援助する支援職や教員、そして家族の皆さん(私たちは総じてCaregiversと呼んでいます)の心理的支援に関する研究を行ってきました。

 しかし、2020年に入ると、ご存じの通り新型コロナウイルスの流行で社会の状況が一変してしまいました。感染者が増大していく中で、使命感を抱きながら無念にも過労で倒れていく医療従事者が続出していく様子を、私たちは報道を通じて目の当たりにしながら、「私たちにできることはないのだろうか」とトヨタ財団サイドの関係者とともに考え続けました。

 特に、最近職業としてのCaregiverである方々に対し「お金をもらっているのだから当然」というコメントもネット上で散見されます。ですが、苦労があることはもちろん承知で、自らの社会的使命感に従い、職業としてのCaregiverを仕事として選んでくださった皆さんに「ありがとうございます」の言葉以外を見つけることは、私たちプロジェクトメンバーにとっては非常に難しいことです。

 加えて、私たちは医療関係者ではありませんから、注射一本打つこともできません。ひとことでいえば「つかえない」人です。そんな「つかえない」私たちのために、毎日深夜まで休まずに働いてくださっている職業としてのCaregiverである方々に対し「お金をもらっているのだから当然」という言葉は到底考えられません。

 

 本プロジェクトができることといえば、すぐれた公認心理師もそろっておりますので、疲れた人々に感謝しながら、お話を伺うことはできるかもしれません。疲れた医療関係者はもちろんのこと、障害者を援助する支援職や教員、そして家族の皆さん、つまり「すべてのCaregiver」に、「ありがとう」を伝え続けられるような場を創れたらという思いで、この「Thanks Caregivers Project」は始まりました。

 Caregiverに限らず、すべての職業人としての精神は、全体的なパーソナルな自己(Whole Personal Self)が植木鉢のように支えているように考えられます(Akkerman & Meijer, 2011)*。つまり、もし労働上で自尊感情などが侵害されるような環境にさらされていたら、全体的なパーソナルな自己が健康的でなくなってしまうことになり、職業人としていきいき働くことは難しいのではないでしょうか。


 たったひとことの「ありがとう」が、職業選択に自信を失ってしまうかもしれない、すべてのCaregiverの自尊感情を支えてくれることもあると、私たちは信じています。


 もちろん、従来に予定していた研究は変更なく進めますが、すべてのCaregiverやCaregiverに感謝を表したい人々とプロジェクトメンバーが、心を温めるように交流をすることで、健康に留意しながら過ごしつつ、明るい未来をともに待ち望む機会を得ることができたらうれしく思います。

 どうぞ「Thanks Caregivers Project」に暖かいご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 末筆になりましたが、医療関係者、障害者を援助する支援職や教員、そして家族の皆さん、すべてのCaregiverが健やかに日々を過ごせるよう、お祈り申し上げます。


 そして、私たちの活動を支えてくださる公益財団法人トヨタ財団の皆さんにも。

 いつもいつも、ありがとうございます。


Thanks Caregivers Projectメンバー一同



*Akkerman, S.F., & Maijer, P.C. (2011). A Dialogical approach to conceptualizing teacher identity. Teaching and Teacher Education, pp.308-319.