【リレートーク#2 横山克貴】自分のことを話せる機会を多様に持っていたい

 この「リレートーク」では、Thanks Caregivers Projectのプロジェクトメンバーが不定期に気持ちを語ります。第2回目は、最近はオンラインカウンセリングを通じて、人生の軌跡を生きづらさを抱える方とともに見つめ続ける、一般社団法人ナラティヴ実践協働研究センター センター長の横山克貴さんにお願いしました。


 こんにちは、横山克貴です。私は一般社団法人ナラティヴ実践協働研究センターという場所で、カウンセリングに関わる仕事をしています。
(写真 一般社団法人ナラティヴ実践協働研究センターの様子)

 都内のコロナウィルスの新規陽性者数の推移などを見ると、緊急事態宣言の後、少しずつ状態は落ち着いてきているのかなという気がしますが、さらに1か月の緊急事態宣言の延長が発表されるなど、大変な状況は続いています。私のいるセンターも、都内にあるので、その影響は免れません。


 カウンセリングもオンラインの割合が多くなり、実際にオフィスに来ていただいてのカウンセリングはキャンセルになったり、申込が減ったりしています。最近はオフィスに行くことはほとんどなく、もっぱらオンラインでのカウンセリングや仕事が中心です。もちろん、オフィスには手指消毒用のアルコールジェルを用意したり、カウンセリング中はマスクをつけるなど、できる対策をしていますが、どちらかというと電車によって、都内を移動することの怖さが、私たちの足を遠のかせているように感じます。


 カウンセリングは、最低限、お互い会話を交わすことができたら可能なので、そういう意味ではオンラインでも実施することができます。オンラインの拡大という点では、この1年で、オンラインで会話をしたり、カウンセリングができるようなサービスや機会が広がっていったように思います。

 一方で、ちゃんと、直接会って話せる場の大切さも変わらずにある気がしています。実際に顔を合わせて話すことを大切に感じる方もいますし、いくらインターネットが普及したと言っても、オンラインから距離のある生活をしている人や、抵抗のある人もいます。オンラインの環境があっても、生活の場のなかでは、なかなか落ち着いて自分のこと話すのに集中できる環境を作れない、ということもあると思います(例えば、家にいるとインターホンが鳴ったり、隣人や家族の存在が気になったり)。


 オンラインの可能性や便利さを増やしていく一方で、やはり、オンライン上だけでなく、会って話をするための空間や場所が、多様にこの社会に用意されていることは、大切な気がしています。私のいるセンターも、実質的にはオンライン・カウンセリングの申込ばかりですが、オフィスで会える可能性も保ちながら続けているところです。


 もっとも、そんな「物理的に会う」ことを難しくされてしまっているのがこの状況なわけですが。ただ、ここまで書いてきて、どちらの可能性や機会を保つ努力をしながら、一方で、「本来はできたはずの十分な形」でなかったとしても、自分のことが話せる機会が必要な人、誰かと繋がることが少しでも和らぎにつながる人が、そうした機会や機関、人と繋がっていってほしいし、繋がれるようにしていきたいという感じがしてきました。漠然とした思いで、具体的な方法も思いつかず、自分の出来ることの限りも感じながらですが、そんなことを考えていきたいです。


(よこやま・かつき)一般社団法人ナラティヴ実践協働研究センター センター長。公認心理師。東京大学大学院教育学研究科臨床心理学コース修士課程修了(教育学)。日本学術振興会特別研究員、The University of Waikato  Visiting Postgraduate Research Students を経て現職。東京大学大学院教育学研究科博士課程臨床心理学コース博士課程在学中。

カウンセリングを受けたい場合は、こちらをご覧ください。

Thanks Caregivers Project

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