【リレートーク#6 丸吉南海】毎日が卒業式?!のスペシャルな学校
この「リレートーク」では、Thanks Caregivers Projectのプロジェクトメンバーが不定期に気持ちを語ります。第6回目は、都立の特別支援学校で特別支援教育コーディネーターをされている丸吉南海(まるよし・なみ)先生です。新型コロナウイルスによる様々な困難の中で、自分なりに頑張っている特別支援学校の子どもたちの成長に元気をもらえているという丸吉先生。「たしかにいろいろあるけど、教師って本当にやりがいがある仕事なんです」という丸吉先生の思いが伝わる文章となりました。ちなみに、タイトルの謎は最後まで読んでいただきますとわかります。
こんにちは。都立の特別支援学校で特別支援教育コーディネーターをしている丸吉南海です。
本プロジェクトでは、caregiverとしての教師研究における研究コーディネーターというお仕事をもらいました。
普段は教員として学校に勤務しています。毎日、個性あふれる魅力的なかわいい子どもたちと過ごしています。また、近隣の園・学校に出向き、支援の手だてについて一緒に考えたり、入学を控えたお子さんの保護者から相談を受けたりすることも私の仕事です。
一方で、私は「障碍者のきょうだい」の一人でもあります。教員と障害者のきょうだい、2つのライフストーリーをもつ者として、このプロジェクトに参加しています。弟が小さい頃、学校の先生をはじめ、多くの方が私たちを助けてくれました。弟だけでなく、私たち家族を支えてくれました。いろいろな人にとても大切にしてもらったことで、弟はマイペースで豊かな人生を送っています。そして私はそのような日々を過ごすことで、この職業に出会うことができました。
学校現場はいま、大変でしょう!とよく言われます。確かにこれまで通例で取り組んできたことが変更せざるを得なくなったり、新しく検討しなければいけないことができたりと、業務が増えているのは事実です。ちなみに都立特別支援学校には以前から外部専門家(学校により異なります。本校では心理の専門家、OT、PT、スクールソーシャルワーカーなど多種多様の専門家が来ています)が来て、専門分野の知識や技能について私たちに助言等してくれています。
話を戻しますが・・・
特別支援学校ではなく、小学校・中学校の先生方におかれましても本プロジェクトの調査報告で挙げられているとおり、コロナ禍によって、業務の面でもメンタル面でもより厳しい状況にあります。登校することに不安を抱えている子どもたちもいます。 子どもたちのために、という思いで日々関わっていますが、授業中の指導・支援、それだけに専念するというわけにはいきません。子どもたちそれぞれには学校にいる時間以外の生活の場があり、そこにも必要な支援がたくさんあります。
保護者も悩んでいる人、困っている人がいます。 それは現場にいて痛感していることで、このプロジェクトが一つのきっかけとなり、多くの人に知ってもらうことで何かが変わっていくといいな、と強く思います。
こんな状況ではあるのですが・・・。子どもたちがポジティブなんです!
障害の特性によっては新しいこと、普段と違うことが苦手な子どもがいます。
感覚に過敏さがあり、マスクをつけることが私たちの想像以上に辛い子もいます。
スケジュールや約束事の変更をとても不安に感じる子もたくさんいます。
自分の気持ちを表現することが難しい子もいます。
それでも子どもたちそれぞれに、自分なりにいまの状況を理解し、生活をしているのです。
登校すると挨拶とセットで手の消毒、下校前は体温チェックで担任の先生におでこを見せる、友達のすぐ隣りではなく、少し離れる目印のニコちゃんマークのあるところに座る、などなどまさに学校生活におけるニューノーマルな生活様式をもう当たり前のように受け止めています。
もちろん、ご家庭のサポート、先生方の指導の賜物、ということでもあるのですが、もともとの子どもたちのポテンシャルが高いのです。これはこれまでの学びの積み重ねや関係性の育ちによって成り立っているのだと思います。子どもたちは本当にたくましいです。子どもたちの姿に励まされます。大人たちは文句ばっかり言っていられません。 正論、美しい話になってしまいますが、これも(私が感じている)事実です。 学校現場は子どもと先生(ときには保護者も)の相互作用によって成り立っています。どちらが助けられているのか分からなくなることがあります。こういう感覚があるということも、caregiverである先生方への支援は子どもたちへの支援につながっていく、ということに関連してくるのだと思います。
以前、本プロジェクト事務局統括の石島照代先生が本校に見学に来てくださったときのことです。特別支援学校の中に入るのは私たちの学校が初めての経験だったという石島先生。子どもの下校時に多くの先生たちが玄関でスクールバスを見送る様子を見て、石島先生が「卒業式みたい!」とおっしゃったんです。私たちにとっては、普通のこと。発車直前まで何かあったときに対応できるようにするのが主な理由ですが、確かに「気をつけて帰ってね。また明日ね。」という思いで毎日見送っています。当たり前のこととしてやってきていることでしたが、石島先生のお話を伺って「確かに、この光景、すごくいい!」と自分の学校や先生たちを、あらためて好きになった出来事でした。
私たちはこういうちょっとした、でも大切な出来事や経験を支えにして日々、教育活動にあたっています。 「先生たちは大変だ」という事実。でも、みなさんにはそれだけでなく、「楽しい職場、やりがいのある職業でもありうる」という事実も知ってもらいつつ、caregiverとしての教員を見てもらえるとうれしいです。
(まるよし・なみ)東京都立城東特別支援学校主任教諭、特別支援教育コーディネーター
公認心理師・ 臨床発達心理士・学校心理士 弟が知的障害のある自閉症です。
スクールバスを見送る教員たち(写真用にいつもよりもたくさん手を振ってもらいました(笑) )
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