【リレートーク#9 勝野正章】コロナ禍のなかでがんばっておられる先生方、ありがとうございます。

 この「リレートーク」では、Thanks Caregivers Projectのプロジェクトメンバーが不定期に気持ちを語ります。第9回目は、東京大学大学院教育学研究科 勝野正章(かつの・まさあき)教授です。今回は、勝野教授がプロジェクト統括をお務めの、「Caregiverとしての教師」プロジェクトチームでの調査状況をご説明いただきました。



 こんにちは。東京大学大学院教育学研究科の勝野です。現在、「Caregiverとしての教師」プロジェクトチームでは、特別支援教育系教員の皆様方のメンタルヘルスと労働時間の関連の観点から質問紙調査を行っています。


  本調査は東京都を中心に行っていましたが、調査の趣旨にご賛同いただきました、関西圏の先生方にも調査にご参加いただいていると伺いました。新型コロナウイルスがまん延するなか、感染防止に務めつつ現場で熱心にご指導いただいている先生方から、連日たくさんのご回答をいただけており、本当に感謝しております。ありがとうございます。 

  せっかくの機会ですので、たくさんお寄せいただきましたお声の一部を、ホームページ上でご紹介させていただくことにいたしました。特別支援教育系教員の先生方の労働環境に関する理解の一助になれば幸いです。 


<コロナ禍がもたらす影響> コロナ禍での、職員間のコミュニケーション不足による生徒への連絡などのすれ違いが目立ちます。専門教科のスキルアップ不足による教員同士の温度差を感じる。教員のメンタルが近年下降気味なため、保護者への対応が、難しく管理職のサポートも弱い。今、欠けているのは社会的に対応できる指導者が少なく日々教師間での助け合う気持ちに欠けている。駆け込み寺が必要かも。(特別支援学校高等部教員) 


 <医療ケア児のための増員も必要> 初任の教員でも、先輩の指導を見ることもできず、一人担任になってしまう体制は気の毒です。研修をしても、知識と実際は違います。

 メンタルで病休に入る教員が増え、ますます体制が厳しくなっています。みんな、疲弊しながらも、頑張っていますが。知的にも医療的ケアの児童が入るようになってきたので、ぜひ、定数を増やしてほしいです。 (特別支援学校小学部教員)


 <生活時間の確保が難しい> 自分の経験不足・知識不足・要領の悪さは重々承知しているが、とにかく時間が足りず、人間らしいまともな生活が遅れていないと感じる。

 帰宅したら食事睡眠5時間入浴をするだけで手一杯。土日も溜まった家事を行うのみで疲れてプライベートで何をする気力もない。このままでは疲労・疲弊でいつか潰れると感じるが、子供は可愛い。保護者にも寄り添いたい。(公立小学校特別支援学級教員) 


 <実態に即した教員配置を> 特別支援学校の特に小・中学部の教員数は絶対的に足りない。小学部1年でも6人の児童を1人の担任で受け持つこともザラである。

 児童の安全確保すら非常に難しい状況である。教員数を決定する計算式があり、ただ機械的に教員数が決められるのと、各校の重度重複学級の設置数に厳しい制限があり、その上年々減らされる傾向にあることで、ますます教員数が足りなくなっている。

 個々に応じた指導、支援が強く求められる世の中の流れに逆行している。教員の事務仕事も増える一方である現在、児童・生徒、そして教員のよりよい未来のために、人員を増やす、事務量を減らすなどの環境整備を切に願う。(特別支援学校中学部教員) 


  どのお声も、先生方が一生懸命がんばっておられる状況が分かります。先生方のお気持ちを受け止めながら、私たちも特別支援教育系の先生方の労働環境改善に少しでも役立てるような研究を進めて参りたいと思います。


  調査はまだ続いております。今回は、たくさんの反響をいただいていることから、関東圏・関西圏に留まらず、全国の先生方にご参加いただけますよう、ネット上でも調査受付を開始いたしました。特別支援学校・特別支援学級・通級のいずれかをご担当いただいている先生方であれば、どなたでもご参加いただくことができます。調査にご協力いただけます方はこちらからお申し込みください。(クリックしていただきますと申し込みフォームが開きます)



  末筆になりましたが、全国で頑張っておられる、すべての教育関係者の皆様のご健康をお祈りしております。
 毎日熱心なご指導、ありがとうございます。どうぞくれぐれも、お体にはお気をつけてお過ごしください。 




(かつの・まさあき) 東京大学大学院教育学研究科 副研究科長。Ph.D.(University of Waikato: NZ)。専門は教育行政、学校経営の民主主義理論。北星学園大学、お茶の水女子大学、東京大学大学院教育学研究科助教授・准教授を経て、2013 年10 月より学校開発政策コース教授(現)。2018 年~2020年東京大学教育学部附属中等教育学校長(兼務)。2021年4月より現職。



Thanks Caregivers Project

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